【認知症】『問題行動』が幸せに暮らすためのヒント?

特養の入居相談で認知症を患っているご家族からこんなお話をよく聴きます。

ご家族
認知症の母をこれまで世話してきましたが、もう限界です。
一人では何もできなくなってしまったので、全て私が母の世話をしてきたのに、急に私が母の財布を盗ったと怒り出したり、嫌みを言われたりするんです。
「これだけしているのに」って思うと悲しいし、イライラするし、母に優しく接することができなくなっている自分が嫌になってきて。。。
認知症の人の将来推移
参考:認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~の概要(厚生労働省)を基に作成
厚生労働省の調査によると、2025年時点で認知症になっている人は約730万人(65歳以上の高齢者の約5人に1人)になると予想されています。その後も認知症になる人の数は増え、2060年では約1,154万人(65歳以上の高齢者の約3人に1人)を超える予想となっています。
この数字と先ほどのご家族からいただいたお話を考えると『不安』を感じる方も多いでしょう。
でも、認知症の方、またそのご家族が全て『不安』ばかり抱えているのでしょうか?
マイナスなイメージとして捉えてしまいがちな『認知症』ですが、
認知症をお持ちでも、『幸せ』に暮らされている方がいるのも事実です。
一般的に言われる『問題行動』をどう理解するかで『不安』が『幸せ』になりますので、これからの話をそのヒントにしていただければ幸いです。
これから『認知症』についてのテーマでいろいろと話をさせていただきますが、
大前提として知っておいてもらいたいことがあります。
認知症は「何も考えることができなくなってしまった」というものではないということ。
認知症の方は「一生懸命、自分の中で起こっている変化と周りの環境や状況を考え、考え抜いた末に出した答えから行動される」ということ。
このことを踏まえてお付き合いください。

【認知症】『問題行動』とは

good_or_bad
● 徘徊
● 不潔行為
● 興奮・暴言・暴力
● 帰宅願望
● 拒否
● 被害妄想(盗まれた、嫉妬等)
● 同じ話を繰り返す
● 作り話
細かく挙げればきりがないほどいろいろと『問題と感じる行動』はあります。
介護現場での専門用語もあるので、先ほどの大前提を踏まえながら具体的にこれらの行動を考えてみます。

徘徊

『徘徊』という字の意味は

目的もなく、うろうろと歩きまわること。」
引用:三省堂 大辞林 第三版

になります。
介護の現場ではよく使われる言葉ですが、個人的に「大嫌い」な言葉です。
私がいる特養でも、フロアをいつも“散歩”される方がいます。私たちはその方がなぜ常に“散歩”をされるのかを100%理解することはできませんが、昔は山登り趣味としてされていたので、もしかしたら、“山登り”をしようと歩かれているのかなと私たちは想像します。
何かを考え、何かを想う結果歩かれているのだと思います。

不潔行為

● 汚れた下着のまま替えない
● 排せつ物で汚れた下着をタンスの奥に直される
● 排せつ物を触られる、壁に塗られる、服で拭かれる、頭に塗られる、食べる
● 便器の中の水で顔を洗われる
などなど。
結構衝撃的な内容もありますが、私が経験したことを挙げています。
その現場に遭遇した時は、あまりの理解不能な状況に思わず
「何してるんですか!!」
「汚いでしょ!!」
大きな声が出てしまうかもしれません。
ご本人としては“一生懸命、自分の中で起こっている変化と周りの環境や状況を考え、考え抜いた末に出した答えがその行動”だったとしたら、その大きな声にどう感じるでしょうか。
『排せつ』の例
認知症になると、体の感覚がわかりづらくなり、排せつしていても気づかない場合もあります。
もし自分の下着がいつの間にかものすごく汚れている状況だったことに気づいたら、どうしますか?
「なんとか処理しないと」と考えると思います。
また、目の前の物の状況を判断することが難しくなってきている状況では、「なんとか処理しないと」という考えになる前に触ってしまい、既に手が排せつ物で汚れてしまっているかもしれません。
ご本人
「うわ、手についてしまった」
「どうしよう」
「この手はすぐになんとかしないと」
「とりあえずこれで拭こう。。。」
皆さんも子供の頃手が濡れたり汚れたりした時にいろいろと考えた結果、自分のズボンや服、壁などで拭いたことがあるんじゃないですか?
その時と同じように、一生懸命どうしたら良いか考えた結果の行動なんです。
もっと認知症が進行していると、手についたものが『汚いもの』というのもわからなく、とにかくベタベタした何か不快なものが手についているから、何かでそのモノを拭く
手を拭いたモノについても、それが何か理解ができないので『良し悪し』の区別はつけられません。
ただ、手についている気持ちの悪いものを取り除いただけなんです。
そこに大声で否定的な言葉を受けるとパニックになるでしょうね。

興奮・暴言・暴力

そのままで、人によっては興奮して暴言や暴力として自分の想いを表現されることがあります。
私も引っ掻かれ、噛まれ、殴られ、蹴られと経験しました。
理不尽な内容にイライラすることもありますが、その行動に至った理由を考えるようにしています。

帰宅願望

「家に帰りたい」という気持ちが高まり、実行に移そうとされることがあります。
自宅にいるのに「家に帰ろう」とされる時もあります。
これはただ今いる場所が居心地悪いという理由であったり、『記憶』の問題であったりします。
認知症の方の『今』は認知症の進行とともに若返ることが特徴です。
「家に帰る」理由を確認すると、
● 夕食の支度をしなければいけない
● 子供が学校から帰ってくる
などの昔の記憶が『今』になっていることがよくあります。
同じ理由で、自宅にいながら「家に帰りたい」というのは、昔住んでいた家と今の家が違い、昔の記憶が『今』になっているためだと考えられます。

拒否

こちらからの提案に対し、断られることが時々あります。
介護現場では入浴トイレの誘いに対してよく見られます。
羞恥心や面倒に感じることから断られる部分も多くあると思いますが、こちらの説明不足理解ができてないまま知らない場所へ連れてこられ、服を脱がされることに驚き拒否に繋がることもあるでしょう。

被害妄想

● 財布を盗まれた(物盗られ妄想)
● 自分の悪口を言っている
● 自分だけご飯を食べていない
● 殺される
など、いろいろな妄想をされる場合があります。
そして、悲しいことに、一番身近でお世話をしている方加害者とされ、冒頭の相談者みたいに敵意を向けられます。
これは『喪失体験』が大きく影響します。
認知症が進むにつれ、その方はたくさんのモノを失うことになります。
『記憶』もそうですし、目の前の物が何か理解し辛くなると、これまで出来ていたことも出来なくなり自信も失います。
いろいろな事が自分の中から失われていくことは、自分自身のアイデンティティを喪失自分自身が崩壊してしまう危機的状況になります。
その危機的状況に対し、自分を守るためにはどうすれば良いか。自分以外の人を『悪者』にすることが「その状況になったのは自分のせいではない」と思うことができるのです。
『財布盗難事件』の例
自分で直した場所の記憶が失われ、どこにあるのかわからないが、自分を守るために
ご本人
「自分はここに直したはず」
「それが見当たらないということは、誰かが盗んだに違いない」
という思考になります。
なぜ、その『悪者』が一番身近な介護者になることが多いのか
認知症の方の特徴として、最近の記憶(短期記憶)は早く失われます。認知症が進むと数分前のことも失われてしまいます。
そうすると、問題発生した時に頭の中にすぐ思い浮かぶ顔『直前に会った人』『一番よく関わる人』になってきます。
その結果、残念ながら一番身近でお世話をする人が『犯人』とされてしまうことが多いのです。
本人の中では他人を『犯人』としなければ、自分自身が崩壊してしまうので、どうすることもできません。

同じ話を繰り返す・作り話

認知症の方でお話好きの方はコレです。
話がエンドレスループかつ本当の話なのかどうなのか。
これも『記憶』が大きく関わってきます。
『話した』という記憶が失われるので、テンションを維持し何度でも話されます。また、記憶のところどころが失われるので、途中で切れた映画のフィルムをつなぎ合わせたようなわけのわからない展開に発展し本当の話なのかどうかわからない内容になります。
あと、記憶が失われている部分のつじつまを合わせるために、話を作ることがあります。これも、自分を守る行動です。

【認知症】『問題行動』と感じているのはあなたたち

驚き

認知症の方の『問題と感じる行動』について長くなってしまいましたが、お付き合いいただきありがとうございます。
さて、それらの行動について『問題』と感じているのは誰でしょうか。
本人は全く感じていません。
本人『一生懸命、自分の中で起こっている変化と周りの環境や状況を考え、考え抜いた末に出した答え』を実行しているので、その行動は本人にとって『真面目』な行動なんです。
『問題』と感じているのはその周りの人たちです。勝手に『問題』ととらえてしまっているから、お互いの考えや想いが噛み合わず悪循環となって進んでいきます。
この『問題行動』という表現見直され、今は『周辺症状(BPSD)』という表現に改められています。
今までいろいろな認知症の方と関わって来たので、介護をする時の大変さは十分理解していますが、認知症の方がとる行動を『問題』としているのは実は本人ではなく、周りの人たちということを知るのは大切なことです。

【認知症】『問題行動』が幸せに暮らすためのヒント

幸せに暮らすためのヒント

『認知症』をマイナスなイメージでとらえてしまっていた原因は、認知症の方の行動を『問題』ととらえてしまっていたためです。
この『問題』と感じる行動につながった理由や経緯を考えることで、本人の考え困っていたこと知るきっかけとなります。そして、そのきっかけを掴むことができ、本人と一緒に解決することができれば、それまで『問題』と感じていたものは『問題』ではなくなるのです。
一度、その『問題』と考える思考を変えてみませんか?
認知症の原因や症状を理解し、認知症の方の行動を認めることができれば、これまで『問題』と感じていた行動も理解することができ、その解決にもつながるため、本人も介護者もお互いに安心した生活を送ることができるのではないでしょうか。
このように考えると『問題行動』が幸せへのヒントになります。

【認知症】『問題行動』とされない老人ホームを選ぶためには

幸せの象徴

様々な家庭環境があるので、認知症をお持ちのご家族の老人ホームを探される場合もあると思います。
介護のプロが働く老人ホームでも認知症の原因や症状を理解し、一人ひとりの個性に合わせて適切なケアができる施設はほんの一部です。
私の働く特養でも、正直な話ユニットによってケアの質は左右されます。
なので、入居する施設は十分情報を集め失敗しないように選びたいものです。

認知症の方が入居可能な施設

● 特別養護老人ホーム(特養)
● サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
● グループホーム(認知症対応型生活介護)
● 有料老人ホーム
この4つの中から選ぶことになります。

施設選びでまずすること

まずは、希望するエリアにどれだけの施設があるのか情報集めをしましょう。担当のケアマネさんがいれば相談しましょう。
あとはインターネットからの情報収集として、老人ホームの検索専用サイトから情報を得ましょう。
「LIFULL介護」というサイトが施設の掲載数が多く見やすく探しやすく認知症についても相談が可能な施設を絞って探すことができるので、超おすすめです。
さらに、気になる施設をまとめて資料請求することができるので、とても便利です。
施設選びは、本人はもちろんのこと、ご家族全員で考えたいので、資料を広げて家族みんなで検討することができるので、資料請求はしておきましょう
資料が手に入れば、資料を見ながら施設の長所やアピールポイント、譲れないポイント等を確認します。
ある程度優先順位が決まれば施設見学の段取りをしましょう。
時間は使いますが、必ず施設見学はしてください
施設見学の必要性は別のページ
にも書いているので、良ければご覧ください。