特養の費用が160万円も安くなる世帯分離のメリットとデメリット

ご家族
特養の入居を考えていますが、月々の費用はいくらぐらいですか?
生活相談員
その方によって月々の費用が違います。うちはユニット型個室の特養になりますので、その方が「課税世帯」になる場合は15万円程「非課税世帯」になる場合は5万円台か8万円台になります。
ご家族
そんなに違いがあるんですか? 5万円と15万円だと10万円も違いますよね?
生活相談員
収入によって減額の制度が利用できるで、それぐらい差が出るんです。ちなみに、入居をご検討いただいている方の世帯の中で住民税を払われている方はおられますか?
ご家族
私の家族と住んでいて、住民税を払っています。
生活相談員
それでは「課税世帯」になるので、特養に入居されて月々の費用は15万円程になると思います。
ご家族
そうですか。。。 父の年金では難しそうですね。。。

という話をすることが時々あります。

特養の費用が160万円も安くなる世帯分離のメリットとデメリット:はじめに

「負担限度額認定証」のページで詳しく説明をしていますが、「課税世帯」の方は特養の居住費(部屋代)と食費の減額制度を利用することができません。そのため、介護サービスの利用料金(1割~3割負担)に加えて、その施設ごとで設定されている居住費食費正規料金を支払うことになります。

負担限度額認定証についてあまり詳しくない方は先に「負担限度額認定証」のページを確認しておくと、この後の理解がし易くなりますので、ぜひご覧ください。
▶「【非課税世帯が得】特養の入居費用を安くする~負担限度額認定証~」

それでは、このご家族はユニット型個室に入居できないのでしょうか?

ご家族の話の中で「父の年金では難しそう」という言葉です。

お父さんの収入だけを見て、住民税を支払わなくて良い場合「世帯分離」という方法を取り、子供家族と世帯を分けることでお父さんは「非課税世帯」となり、負担限度額認定証の交付を受けることができる可能性があります。

このページでは、この「世帯分離」について説明していきます。

世帯分離とは

子供夫婦、または兄弟、姉妹と暮らしているなど、二つ以上の家族が一つの世帯として暮らしている状況から、世帯を分けて住民登録をすることです。

世帯とは

厚生労働省の資料を見ると

世帯とは、住居及び生計を共にする者の集まり又は独立して住居を維持し、若しくは独立して生計を営む単身者をいう。

と書かれています。

つまり、同居している家族内で生計を別にする世帯を分けることができるということになります。

同じ家に住んでいるとイメージしづらいですが、「二世帯住宅」のイメージで考えると理解し易いかもしれません。二世帯住宅は親と子家族が同じ家、同じ住所で生活していますが、親と子家族はそれぞれ単独で生計を立てて生活しているイメージです。

日曜日の夕方、「サザエさん」を見るとイメージし易いですね。サザエさんでは磯野家フグ田家が同じ家で生活をし、二世帯住宅になっています。また、別のアニメで「ちびまる子ちゃん」のさくら家も世帯を分けていれば二世帯になります。

世帯分離に関してよくある勘違い

世帯分離をする = 親子の縁を切る

と驚かれる方も中にはいます。

世帯分離はあくまで「住民票を分けるだけ」の話で、「戸籍を切り離すわけではない」ので安心してください。

同居夫婦で世帯分離はできる?

夫婦で世帯を分離し、一緒に住むことも可能です。

世帯分離の前提として、生計を別にする必要があるので、夫婦での世帯分離は夫だけでなく妻にも収入がある必要がありますし、市区町村で世帯分離がふさわしいかどうかの判断をされます。

特養の費用が160万円も安くなる世帯分離のメリットとデメリット

世帯分離をするとどのようなことでメリットがあるのか。また、デメリットはどうなのかについて説明していきます。

メリット

  • 保険料が下がる(介護保険料、後期高齢者医療保険料)
  • 自己負担上限額が下がる(高額介護サービス費、高額医療費)
  • 食費、居住費が下がる(介護保険負担限度額認定証、限度額適用・標準負担額減額認定証)

保険料がさがる

大阪市の介護保険料を例に見てみましょう。
平成30年度~平成32年度の介護保険料について

7,927円(基準となる月額保険料)×12ヶ月 = 年額95,124円(基準額)
基準額 × 所得に応じた割合(0.5~2.0)

で保険料が計算されます。
ここでのポイントは『所得に応じた割合(0.5~2.0)』です。
人によって年間の保険料が基準額95,124円の半額~倍の差があるということです。

以下の表で文字の色を変えている箇所を見てみてください。

保険料段階 対象者 割合 年額
第1段階 ○老齢福祉年金の受給者で、本人及び世帯員全員が市町村民税非課税の方
○生活保護の受給者
0.50 47,562円
第2段階 本人が市町村民税
非課税
同じ世帯にいる方全員が市町村民税
非課税
本人の合計所得金額等(※)
+公的年金等収入額が80万円以下の方
0.50 47,562円
第3段階 本人の合計所得金額等(※)
+公的年金等収入額が120万円以下の方
0.65 61,831円
第4段階 第2段階・第3段階以外の方 0.75 71,343円
第5段階 同じ世帯に市町村民税課税者がいる方 本人の合計所得金額等(※)
+公的年金等収入額が80万円以下の方
0.85 80,856円
第6段階 第5段階以外の方 1.00 95,124円
第7段階 本人が市町村民税
課税
本人の合計所得金額が125万円以下の方 1.10 104,637円
第8段階 本人の合計所得金額が125万円を超え200万円未満の方 1.25 118,905円
第9段階 本人の合計所得金額が200万円以上400万円未満の方 1.50 142,686円
第10段階 本人の合計所得金額が400万円以上700万円未満の方 1.75 166,467円
第11段階 本人の合計所得金額が700万円以上の方 2.00 190,248円

※ 合計所得金額から公的年金等の所得金額を控除した額

 

例えば(上の表を見ながら確認してみてください)
本人の合計所得80万円以下の場合
非課税世帯だと47,562円(年額)
一方、課税世帯だと80,856円(年額)になります。
その33,294円となり、ご本人が市町村民税非課税の方でも、
『世帯』が課税か非課税かの違いで金額が大きく変わります。

自己負担上限額が下がる

「高額介護サービス費」のページで詳しく説明をしていますが、
世帯課税非課税最大3万円近く差が生じます
▶「【高額介護サービス費】利用料金の払い戻しを受ける方法」

【高額介護サービス費の区分と自己負担額】

区分 自己負担上限額(月額)
世帯内のどなたかが住民税を課税されている方 44,400円(世帯)
世帯の全員が住民税を課税されていない方 24,600円(世帯)
・前年の合計所得金額と公的年金等収入額
 の合計が年間80万円以下の方
・老齢福祉年金を受給されている方
24,600円(世帯)
15,000円(個人)
生活保護を受給している方 15,000円(個人)

この約3万円は月々の金額なので、年間では35万円安く済むことになります。

食費、居住費が下がる

さらに、食費居住費も下げることができます。
この食費や居住費の軽減がかなり大きく利用料金の割引につながります。
「負担限度額認定証」のページで詳しく説明しているので、まだの方はぜひ確認をお願いします。

この負担限度額認定証を持っている方だと、施設による料金設定の差はありますが、人によって
月々10万円ほど安くできる可能性があります。
月10万円だと年間120万円
保険料や高額介護サービス費の割引も合わせると、
年間160万円近くも世帯分離によって非課税世帯となることで特養の費用を安くすることができる場合があります。
年間160万円は驚きの数字ですよね。

▶「【非課税世帯が得】特養の入居費用を安くする~負担限度額認定証~」

ただ、この世帯分離の方法が大きなメリットを受けられる方がいる反面
注意しなければ、逆に費用が増える場合があるので慎重に検討する必要があります。

次はデメリットについて説明します。

デメリット

  • 住民票の取得に委任状が必要
  • 高額介護サービス費の合算ができない
  • 国民健康保険料などの支払いが増える場合がある

住民票の取得に委任状が必要

介護保険を利用しようとする段階では、
手続きなど、親のことを子の家族が代わりにすることが多くなります。
その時、親と子が別の世帯になっていると少し手間がかかります。

親に代わって住民票の取得や印鑑登録などの行政手続きが必要になった時、
委任状が必要になります。

委任状は原則、本人が書くものなのですが、
認知症があったりと、本人が書けない場合もあります。
(しれっと家族が代筆してることも多いですが)

高額介護サービス費の合算ができない

先ほど「自己負担上限額が下がる」項目で説明をした高額介護サービス費について、
夫婦で介護保険を利用している場合世帯の利用料金が合算された自己負担上限額になります。

区分 自己負担上限額(月額)
世帯内のどなたかが住民税を課税されている方 44,400円(世帯)
世帯の全員が住民税を課税されていない方 24,600円(世帯)
・前年の合計所得金額と公的年金等収入額
 の合計が年間80万円以下の方
・老齢福祉年金を受給されている方
24,600円(世帯)
15,000円(個人)
生活保護を受給している方 15,000円(個人)

しかし、世帯分離をすると合算ではなく個々での計算となります。

夫婦の介護サービスの1割負担額が合計で40,000円だったとすると、

世帯分離前=24,600円
世帯分離後=30,000円(夫:15,000円、妻:15,000円)

となり、費用負担が増える場合があります。

「高額介護サービス費」のページで詳しく説明していますので、こちらもご確認ください。
▶「【高額介護サービス費】利用料金の払い戻しを受ける方法」

国民健康保険料などの支払いが増える場合がある

国民健康保険料も高額介護サービス費の自己負担上限額と同じ考え方で、
世帯分離前に上限を超えていると費用負担が増える場合があります。

「メリット」と「デメリット」のまとめ

世帯内の状況を確認せず、「安くなるって聞いたから」と安易に世帯分離をしてしまうと、
安くなるどころか逆に費用が増える場合もあります。

これまで紹介した内容をもとにご自身の世帯はどうか十分確認をしてから判断しましょう。

 

特養の費用が160万円も安くなる世帯分離の手続き方法

世帯分離をするにはどうすればよい?

市区町村の窓口(住民課等)に行き、世帯変更届、または、世帯分離届を提出する必要があります。

世帯変更届は誰が出せる?

  • ご本人
  • 世帯主
  • 代理人

が提出できます。

代理人の場合、または、親族でも別世帯の場合は委任状が必要

届出はいつまでにしなければいけない?

変更が生じた日から14日以内に提出する必要があります。

必要な物や必要書類は?

① 住民異動届(世帯変更届)
異動者=世帯から分離する人
新世帯主欄=分離後の世帯主
旧世帯主欄=分離前の世帯主
② 身分が確認できるもの
届出をする人の本人確認が必要です。
例)運転免許証、マイナンバーカード(個人番号カード)、パスポート、障がい者手帳、健康保険証など
③ 印鑑
④ 国民健康保険被保険者証(※加入している方のみ)
分離される方全員分の国民健康保険被保険者証が必要
⑤ 国民年金の支払いに必要となる通帳やキャッシュカード
⑥ 委任状(※代理人が手続きをする場合のみ)

市町村によって別に必要な書類等があるかもしれないので、手続きをされる際は役所の窓口へ必要な物の確認をしておきましょう。

 

特養の費用が160万円も安くなる世帯分離のメリットとデメリット:まとめ

世帯分離について理解できましたか?

簡単に言うと、冒頭の事例でお父さんの年金が少ない(非課税世帯並)世帯分離によるメリットが大きい可能性があり、逆に年金が多い(課税世帯並)デメリットの方が大きい可能性があります。

また、戸籍を切り離すわけではないのですが、お住いの市区町村によっては一度世帯分離をした場合世帯を戻すことができないところもあるので、その点も十分確認してください。

別ページで紹介している「負担限度額認定証」や「高額介護サービス費」の制度については、特養や老健などの介護保険施設を利用する時に担当の相談員が確認するので、『申請の条件に該当する方で制度のことを知らなかった』ということはないと思います。
でも、今回紹介しました「世帯分離」という方法知っている人だけが得をする方法です。
収入が減るので、私もあえては伝えませんし、行政も税金を使うことになるので聞かれなければ伝えません。
もし既にどこかの施設に入られているご家族がいらっしゃれば、「世帯分離」で得をするかどうか検討してみても良いかもしれません。

こちらも併せて読んでほしい!

▶「失敗しない老人ホームの探し方~たった2つのステップ~」